【完結編】EV車向け振動試験 その3
2025.06.25
【完結編】EV車向け振動試験 その3こんにちは、振動マイスターです。
前回コラムでEV車向け部品の振動試験の一例として、
JIS C60068-2-6 正弦波振動試験方法について説明しました。
具体的な試験条件については、今回のコラムに引っ張ってしまいました。
今回のコラムでJIS C60068-2-6 正弦波振動試験方法の具体的な試験条件の一例を示し
EV自動車向け振動試験は完結となります。
JIS C60068-2-6 正弦波振動試験方法 試験条件選定例前回説明したJIS C60068-2-6の附属書A/B/Cに基づいて
EV自動車向け部品の試験条件を選択してみましょう。
その製品が部品か機器かの判断は試験者の判断によって分かれそうですが
仮に部品と判断した場合、附属書Bを参照します。図1 附属書A 表A.1 図2 附属書B 表B.1 (クリックすると拡大します)
※前回コラムより再掲
図3 附属書C 表C.1 図4 附属書C 表C.2 (クリックすると拡大します)
※前回コラムより再掲
附属書Bの適用例に『はん用陸上輸送車両~の部品』とありますので
10~500Hzの振動数を選択します。
併せて、振幅及び加速度は製品の環境に応じて選択します。
ここでは過酷な条件である振幅0.75㎜ 又は 100m/s2を選択します。
☆★注意★☆
規格に記載されている振幅は片振幅を表します。
全振幅で設定する場合は2倍の1.5㎜P-Pとなります。
㎜P-Pは『ミリ ピークtoピーク』と読み、全振幅を意味します。
JIS規格 B0153機械振動・衝撃用語の規定では『片振幅』『全振幅』の使用は好ましくない
と記載がありますが、案外間違いが多いので注意を促す意味であえて記載します。
さて、話を戻します。
附属書Bより掃引サイクル数は10回であることが分かりましたので
附属書Aの表A.1で該当する試験時間を確認します。
表A.1で10~500Hz の掃引サイクル10回の場合、試験時間が2hと分かります。
まとめると、掃引耐久試験条件は
10~500Hz 0.75㎜ 又は 100m/s2 12分掃引×10サイクル
合計2hの試験となります。
この試験を製品の上下/左右/前後の各軸で実施することになります。
この時、振幅0.75㎜を保ったまま周波数を10Hz⇒500Hzに上げていくと
約58Hzで加速度が100m/s2を超えてしまいます。
そのため、58Hz⇒500Hzまでの周波数では振幅を徐々に小さくして
加速度100m/s2を超えないように保つ必要があります。
この制御が可能な装置の代表格は動電型振動試験機となります。
試験は各軸に対して正弦波振動で実施します。
1軸振動の定義について上下方向をベースに説明します。
500Hzまでは上下方向に対する水平方向の振幅成分が50%以下であること
また、500Hz以上は同100%以下であることと規定されております。
実際の使用環境がキレイな1軸振動ではないので引っ掛かる部分はありますが
どの方向の振動に影響を受けやすいのかを把握する意図を汲み取ればさもありなん
といったところでしょうか。
アイデックス試験機でJIS C60068-2-6に対応した試験条件では、皆様お待ちかね(?)、アイデックス試験機で対応可能な試験条件を例示します。
10~55Hzの試験条件に限られますが、JIS C60068-2-6に対応した掃引耐久試験が実施できます。
【部品に属する場合の振動試験条件例】
振動モード:SWEEPモード
Lo-周波数:10Hz
Hi-周波数:55Hz
掃引時間:4分30秒
掃引回数(サイクル数):10回
振幅:0.75㎜ = 全振幅1.5㎜P-P
【機器に属する場合の振動試験条件例】
振動モード:SWEEPモード
Lo-周波数:10Hz
Hi-周波数:55Hz
掃引時間:5分15秒
掃引回数(サイクル数):20回
振幅:0.35㎜ = 全振幅0.7㎜P-P
上記条件を実施可能な試験機は、振動試験機BF-45UA-E・振動試験機BF-70UA-Eとなります。
いずれも上下振動のみの機種で、試験体のサイズと最大搭載重量に応じて選択いただけます。
とはいえ、実際の輸送環境や製品の使用環境では多軸同時振動が発生するのが自然です。
皆様の中にはすでにBF-50UTなどの多軸同時振動機種をご所有の方もおられるはずです。
そんな方に朗報!上下振動用治具さえあれば前述の試験を実施できるんです。
多軸同時振動機種に上下振動用治具を取付けると、あら不思議!
治具上では上下振動が発生します。
多軸振動 or 上下振動、どちらかを選ぶ必要はありません。
多軸同時振動機種+上下振動用治具で目的に応じて多軸同時振動と上下振動の使い分け
そんなスマートな選択があっても良いのではないでしょうか?まとめと次回コラム予告いろいろと書きましたが、規格書を読み込んでいくと
随所に試験者の判断に委ねられていることがわかります。
それだけ適用範囲が多岐に渡り、十把一絡げで規定することが容易ではないということです。
これまで規格に深く触れてこなかった方には意外に感じるかもしれませんが
規格はあくまで方法の一つを提案しているに過ぎず、これを基にどんな試験をするのか
試験者に検討の余地が残されていると考えられます。
以前は規格の振動試験を実施したいなどの相談が多くありましたが
最近は具体的に製品の〇〇のトラブルを防止するために振動試験を実施したい
など明確な目的が見える相談が増えた気がしております。
今回でEV車向けの振動試験が完結いたしましたので
次回は最近の相談内容について触れてみようと思います。今回のコラムはここまで。
前回コラムでEV車向け部品の振動試験の一例として、
JIS C60068-2-6 正弦波振動試験方法について説明しました。
具体的な試験条件については、今回のコラムに引っ張ってしまいました。
今回のコラムでJIS C60068-2-6 正弦波振動試験方法の具体的な試験条件の一例を示し
EV自動車向け振動試験は完結となります。
前回説明したJIS C60068-2-6の附属書A/B/Cに基づいて
EV自動車向け部品の試験条件を選択してみましょう。
その製品が部品か機器かの判断は試験者の判断によって分かれそうですが
仮に部品と判断した場合、附属書Bを参照します。
EV自動車向け部品の試験条件を選択してみましょう。
その製品が部品か機器かの判断は試験者の判断によって分かれそうですが
仮に部品と判断した場合、附属書Bを参照します。
図1 附属書A 表A.1 図2 附属書B 表B.1 (クリックすると拡大します)
※前回コラムより再掲
図3 附属書C 表C.1 図4 附属書C 表C.2 (クリックすると拡大します)
※前回コラムより再掲
附属書Bの適用例に『はん用陸上輸送車両~の部品』とありますので
10~500Hzの振動数を選択します。
併せて、振幅及び加速度は製品の環境に応じて選択します。
ここでは過酷な条件である振幅0.75㎜ 又は 100m/s2を選択します。
☆★注意★☆
規格に記載されている振幅は片振幅を表します。
全振幅で設定する場合は2倍の1.5㎜P-Pとなります。
㎜P-Pは『ミリ ピークtoピーク』と読み、全振幅を意味します。
JIS規格 B0153機械振動・衝撃用語の規定では『片振幅』『全振幅』の使用は好ましくない
と記載がありますが、案外間違いが多いので注意を促す意味であえて記載します。
全振幅で設定する場合は2倍の1.5㎜P-Pとなります。
㎜P-Pは『ミリ ピークtoピーク』と読み、全振幅を意味します。
JIS規格 B0153機械振動・衝撃用語の規定では『片振幅』『全振幅』の使用は好ましくない
と記載がありますが、案外間違いが多いので注意を促す意味であえて記載します。
さて、話を戻します。
附属書Bより掃引サイクル数は10回であることが分かりましたので
附属書Aの表A.1で該当する試験時間を確認します。
表A.1で10~500Hz の掃引サイクル10回の場合、試験時間が2hと分かります。
まとめると、掃引耐久試験条件は
10~500Hz 0.75㎜ 又は 100m/s2 12分掃引×10サイクル
合計2hの試験となります。
この試験を製品の上下/左右/前後の各軸で実施することになります。
この時、振幅0.75㎜を保ったまま周波数を10Hz⇒500Hzに上げていくと
約58Hzで加速度が100m/s2を超えてしまいます。
そのため、58Hz⇒500Hzまでの周波数では振幅を徐々に小さくして
加速度100m/s2を超えないように保つ必要があります。
この制御が可能な装置の代表格は動電型振動試験機となります。
試験は各軸に対して正弦波振動で実施します。
1軸振動の定義について上下方向をベースに説明します。
500Hzまでは上下方向に対する水平方向の振幅成分が50%以下であること
また、500Hz以上は同100%以下であることと規定されております。
実際の使用環境がキレイな1軸振動ではないので引っ掛かる部分はありますが
どの方向の振動に影響を受けやすいのかを把握する意図を汲み取ればさもありなん
といったところでしょうか。
附属書Bより掃引サイクル数は10回であることが分かりましたので
附属書Aの表A.1で該当する試験時間を確認します。
表A.1で10~500Hz の掃引サイクル10回の場合、試験時間が2hと分かります。
まとめると、掃引耐久試験条件は
10~500Hz 0.75㎜ 又は 100m/s2 12分掃引×10サイクル
合計2hの試験となります。
この試験を製品の上下/左右/前後の各軸で実施することになります。
この時、振幅0.75㎜を保ったまま周波数を10Hz⇒500Hzに上げていくと
約58Hzで加速度が100m/s2を超えてしまいます。
そのため、58Hz⇒500Hzまでの周波数では振幅を徐々に小さくして
加速度100m/s2を超えないように保つ必要があります。
この制御が可能な装置の代表格は動電型振動試験機となります。
試験は各軸に対して正弦波振動で実施します。
1軸振動の定義について上下方向をベースに説明します。
500Hzまでは上下方向に対する水平方向の振幅成分が50%以下であること
また、500Hz以上は同100%以下であることと規定されております。
実際の使用環境がキレイな1軸振動ではないので引っ掛かる部分はありますが
どの方向の振動に影響を受けやすいのかを把握する意図を汲み取ればさもありなん
といったところでしょうか。
アイデックス試験機でJIS C60068-2-6に対応した試験条件では、皆様お待ちかね(?)、アイデックス試験機で対応可能な試験条件を例示します。
10~55Hzの試験条件に限られますが、JIS C60068-2-6に対応した掃引耐久試験が実施できます。
【部品に属する場合の振動試験条件例】
振動モード:SWEEPモード
Lo-周波数:10Hz
Hi-周波数:55Hz
掃引時間:4分30秒
掃引回数(サイクル数):10回
振幅:0.75㎜ = 全振幅1.5㎜P-P
【機器に属する場合の振動試験条件例】
振動モード:SWEEPモード
Lo-周波数:10Hz
Hi-周波数:55Hz
掃引時間:5分15秒
掃引回数(サイクル数):20回
振幅:0.35㎜ = 全振幅0.7㎜P-P
上記条件を実施可能な試験機は、振動試験機BF-45UA-E・振動試験機BF-70UA-Eとなります。
いずれも上下振動のみの機種で、試験体のサイズと最大搭載重量に応じて選択いただけます。
とはいえ、実際の輸送環境や製品の使用環境では多軸同時振動が発生するのが自然です。
皆様の中にはすでにBF-50UTなどの多軸同時振動機種をご所有の方もおられるはずです。
そんな方に朗報!上下振動用治具さえあれば前述の試験を実施できるんです。
多軸同時振動機種に上下振動用治具を取付けると、あら不思議!
治具上では上下振動が発生します。
多軸振動 or 上下振動、どちらかを選ぶ必要はありません。
多軸同時振動機種+上下振動用治具で目的に応じて多軸同時振動と上下振動の使い分け
そんなスマートな選択があっても良いのではないでしょうか?まとめと次回コラム予告いろいろと書きましたが、規格書を読み込んでいくと
随所に試験者の判断に委ねられていることがわかります。
それだけ適用範囲が多岐に渡り、十把一絡げで規定することが容易ではないということです。
これまで規格に深く触れてこなかった方には意外に感じるかもしれませんが
規格はあくまで方法の一つを提案しているに過ぎず、これを基にどんな試験をするのか
試験者に検討の余地が残されていると考えられます。
以前は規格の振動試験を実施したいなどの相談が多くありましたが
最近は具体的に製品の〇〇のトラブルを防止するために振動試験を実施したい
など明確な目的が見える相談が増えた気がしております。
今回でEV車向けの振動試験が完結いたしましたので
次回は最近の相談内容について触れてみようと思います。今回のコラムはここまで。
10~55Hzの試験条件に限られますが、JIS C60068-2-6に対応した掃引耐久試験が実施できます。
【部品に属する場合の振動試験条件例】
振動モード:SWEEPモード
Lo-周波数:10Hz
Hi-周波数:55Hz
掃引時間:4分30秒
掃引回数(サイクル数):10回
振幅:0.75㎜ = 全振幅1.5㎜P-P
【機器に属する場合の振動試験条件例】
振動モード:SWEEPモード
Lo-周波数:10Hz
Hi-周波数:55Hz
掃引時間:5分15秒
掃引回数(サイクル数):20回
振幅:0.35㎜ = 全振幅0.7㎜P-P
上記条件を実施可能な試験機は、振動試験機BF-45UA-E・振動試験機BF-70UA-Eとなります。
いずれも上下振動のみの機種で、試験体のサイズと最大搭載重量に応じて選択いただけます。
とはいえ、実際の輸送環境や製品の使用環境では多軸同時振動が発生するのが自然です。
皆様の中にはすでにBF-50UTなどの多軸同時振動機種をご所有の方もおられるはずです。
そんな方に朗報!上下振動用治具さえあれば前述の試験を実施できるんです。
多軸同時振動機種に上下振動用治具を取付けると、あら不思議!
治具上では上下振動が発生します。
多軸振動 or 上下振動、どちらかを選ぶ必要はありません。
多軸同時振動機種+上下振動用治具で目的に応じて多軸同時振動と上下振動の使い分け
そんなスマートな選択があっても良いのではないでしょうか?
いろいろと書きましたが、規格書を読み込んでいくと
随所に試験者の判断に委ねられていることがわかります。
それだけ適用範囲が多岐に渡り、十把一絡げで規定することが容易ではないということです。
これまで規格に深く触れてこなかった方には意外に感じるかもしれませんが
規格はあくまで方法の一つを提案しているに過ぎず、これを基にどんな試験をするのか
試験者に検討の余地が残されていると考えられます。
以前は規格の振動試験を実施したいなどの相談が多くありましたが
最近は具体的に製品の〇〇のトラブルを防止するために振動試験を実施したい
など明確な目的が見える相談が増えた気がしております。
今回でEV車向けの振動試験が完結いたしましたので
次回は最近の相談内容について触れてみようと思います。今回のコラムはここまで。
随所に試験者の判断に委ねられていることがわかります。
それだけ適用範囲が多岐に渡り、十把一絡げで規定することが容易ではないということです。
これまで規格に深く触れてこなかった方には意外に感じるかもしれませんが
規格はあくまで方法の一つを提案しているに過ぎず、これを基にどんな試験をするのか
試験者に検討の余地が残されていると考えられます。
以前は規格の振動試験を実施したいなどの相談が多くありましたが
最近は具体的に製品の〇〇のトラブルを防止するために振動試験を実施したい
など明確な目的が見える相談が増えた気がしております。
今回でEV車向けの振動試験が完結いたしましたので
次回は最近の相談内容について触れてみようと思います。今回のコラムはここまで。