医薬品における振動試験機活用事例
2025.09.25
医薬品における振動試験機活用事例こんにちは、振動マイスターです。
さて、前回コラムでは化粧品業界における振動試験機の活用事例を一部紹介させていただきました。
今回は医薬品業界での活用事例についてリクエストがありましたので書いてみようと思います。
医薬品メーカー様では薬機法(2014年に薬事法から名称変更)に基づいて厳正な管理の元
医薬品及び医療機器を製造されております。
製造・流通の各過程で管理基準となる省令(GMP/GDP/GVP/GQPなど)が存在します。
GMP:Good Manufacturing Practice 製造工程における製造管理、品質管理の基準を定めたもの
GDP:Good Distribution Practice 流通における輸送品質の基準や管理方法を定めたもの
GVP:Good Vigilance Practice 市販後の副作用など製造販売後の安全管理基準を定めたもの
GQP:Good Quality Practice 製造販売業者における製品の品質管理基準を定めたもの
各省令に関連する対象者(製造元/販売元)は異なりますが
どの省令も製品の安全性を確保する為、ひいては人命を守る為には必要不可欠な要素です。
そして、これらの省令に明確な振動試験への言及はないものの
(おそらく)全ての医薬品メーカー様が振動試験を実施しております。
医薬品の活用事例では、輸送中のラベルやロット印字の擦れや錠剤の割れ再現が浮かびますが
今回は医薬品成分に関連する活用事例を紹介いたします。
医薬品に関する試験事例 CASE.1とある製剤メーカー様から【粉薬の粒体偏析を確認したい】との連絡を受けました。
りゅうたいへんせき?聞き慣れない言葉の意味を伺うと
振動によって比重または粒度の異なる粒が容器内で偏ることを指すとのこと。
粉薬は体に入って最も効果を発揮する場所(タイミング)で溶けるように開発されており
輸送中の振動などで偏ってしまうと想定していた薬効が得られない
もしくは強く出すぎてしまう、などのリスクがあります。
早速製品サンプルをご準備いただき、輸送を想定した振動条件の他
容器や粉体の振動特性から粉体偏析を引き起こしそうな条件を選定し検証を繰り返しました。
振動を与えては、容器から薬さじで上層/中層/下層から粉体を抜き取って成分を評価する
ひたすら繰り返されるこの作業を横から眺めるだけでしたが
試験者の真剣な眼差しに、命を預かるものとしての覚悟を感じ、胸が熱くなりました。
結果的にはどの振動条件においても粒体偏析が発生しないことが確認でき
自信を持って次工程に進められると安心されておりました。
医薬品に関する試験事例 CASE.2次は、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界で猛威を振るい
あらゆる経済行動が自粛へと向かっていたころ
その裏で進められたコロナワクチンなどのいわゆるバイオ医薬品に関する研究事例を紹介します。
バイオ医薬品の主成分であるタンパク質は
期する効能に応じて望ましい状態を保持する必要があります。
コロナワクチンの接種が始まったころ、-18℃以下の徹底した温度管理が必要であるために
各自治体で保冷設備の確保が課題となっていたことも記憶に新しいのではないでしょうか?
タンパク質は、温度だけでなく振動によっても影響を受ける性質があります。
振動がタンパク質の凝集に影響を及ぼす点に焦点をあてた論文
【輸送時の振動周波数と加速度に着目したタンパク質医薬品凝集の解析】
(2023年 大阪大学 内山研究室 城様 博士論文)
が発表されております。
この研究では、タンパク質の凝集現象について、どのような振動がタンパク質凝集を引き起こすのか
輸送時を想定した振動を与え、凝集が発生するメカニズムを明らかにしました。
振動による液面揺動(スロッシング)が起こる条件で凝集が発生するようです。
すごく簡単に書いておりますので、詳しくは後述の文献をご覧ください。
今後の再生医療にもバイオ医薬品は欠かせない存在であり
その研究の端緒に携わることができたのは、まさに僥倖でありこの上ない誉れであると感じます。
未知なることは面白い今回紹介した事例はいずれもお客様からの問合せから実施に至った事例であり
振動の活用方法として知見の無い内容でした。
その検証にライブで立ち会い、新たな知見に巡り会えたことは大変刺激的でした。
先日、振動試験機メーカーの方から【コラム見てますよ】と嬉しいお言葉をいただきました。
感謝と歓喜の感情とともに発信者としての責任を感じ、身の引き締まる思いです。
今回のコラムはここまで。
【関連文献】
・輸送時の振動周波数と加速度に着目したタンパク質医薬品凝集の解析
城 慎二 , 大阪大学 内山研究室 , 2023年 , 博士論文
・冷蔵時の微弱な振動がタンパク質の凝集に与える影響について
Kizuki S, Wang Z, Yamauchi S, Torisu T, Uchiyama S.
Impact of Weak Vibration Generated by a Refrigerator on Protein Aggregation.
AAPS J. 2025 Jan 27;27(1):34.
doi: 10.1208/s12248-025-01014-z. PMID: 39870844.
・落下の衝撃が凍結状態でもタンパク質の凝集を引き起こす可能性について
Torisu T, Maeda A, Ito S, Uchiyama S.
Protein aggregation in the frozen state induced by dropping stress.
Eur J Pharm Sci. 2025 Feb 1;205:106996.
doi: 10.1016/j.ejps.2024.106996. Epub 2024 Dec 24. PMID: 39722424.
さて、前回コラムでは化粧品業界における振動試験機の活用事例を一部紹介させていただきました。
今回は医薬品業界での活用事例についてリクエストがありましたので書いてみようと思います。
医薬品メーカー様では薬機法(2014年に薬事法から名称変更)に基づいて厳正な管理の元
医薬品及び医療機器を製造されております。
製造・流通の各過程で管理基準となる省令(GMP/GDP/GVP/GQPなど)が存在します。
GMP:Good Manufacturing Practice 製造工程における製造管理、品質管理の基準を定めたもの
GDP:Good Distribution Practice 流通における輸送品質の基準や管理方法を定めたもの
GVP:Good Vigilance Practice 市販後の副作用など製造販売後の安全管理基準を定めたもの
GQP:Good Quality Practice 製造販売業者における製品の品質管理基準を定めたもの
各省令に関連する対象者(製造元/販売元)は異なりますが
どの省令も製品の安全性を確保する為、ひいては人命を守る為には必要不可欠な要素です。
そして、これらの省令に明確な振動試験への言及はないものの
(おそらく)全ての医薬品メーカー様が振動試験を実施しております。
医薬品の活用事例では、輸送中のラベルやロット印字の擦れや錠剤の割れ再現が浮かびますが
今回は医薬品成分に関連する活用事例を紹介いたします。
とある製剤メーカー様から【粉薬の粒体偏析を確認したい】との連絡を受けました。
りゅうたいへんせき?聞き慣れない言葉の意味を伺うと
振動によって比重または粒度の異なる粒が容器内で偏ることを指すとのこと。
粉薬は体に入って最も効果を発揮する場所(タイミング)で溶けるように開発されており
輸送中の振動などで偏ってしまうと想定していた薬効が得られない
もしくは強く出すぎてしまう、などのリスクがあります。
早速製品サンプルをご準備いただき、輸送を想定した振動条件の他
容器や粉体の振動特性から粉体偏析を引き起こしそうな条件を選定し検証を繰り返しました。
振動を与えては、容器から薬さじで上層/中層/下層から粉体を抜き取って成分を評価する
ひたすら繰り返されるこの作業を横から眺めるだけでしたが
試験者の真剣な眼差しに、命を預かるものとしての覚悟を感じ、胸が熱くなりました。
結果的にはどの振動条件においても粒体偏析が発生しないことが確認でき
自信を持って次工程に進められると安心されておりました。
りゅうたいへんせき?聞き慣れない言葉の意味を伺うと
振動によって比重または粒度の異なる粒が容器内で偏ることを指すとのこと。
粉薬は体に入って最も効果を発揮する場所(タイミング)で溶けるように開発されており
輸送中の振動などで偏ってしまうと想定していた薬効が得られない
もしくは強く出すぎてしまう、などのリスクがあります。
早速製品サンプルをご準備いただき、輸送を想定した振動条件の他
容器や粉体の振動特性から粉体偏析を引き起こしそうな条件を選定し検証を繰り返しました。
振動を与えては、容器から薬さじで上層/中層/下層から粉体を抜き取って成分を評価する
ひたすら繰り返されるこの作業を横から眺めるだけでしたが
試験者の真剣な眼差しに、命を預かるものとしての覚悟を感じ、胸が熱くなりました。
結果的にはどの振動条件においても粒体偏析が発生しないことが確認でき
自信を持って次工程に進められると安心されておりました。
医薬品に関する試験事例 CASE.2次は、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界で猛威を振るい
あらゆる経済行動が自粛へと向かっていたころ
その裏で進められたコロナワクチンなどのいわゆるバイオ医薬品に関する研究事例を紹介します。
バイオ医薬品の主成分であるタンパク質は
期する効能に応じて望ましい状態を保持する必要があります。
コロナワクチンの接種が始まったころ、-18℃以下の徹底した温度管理が必要であるために
各自治体で保冷設備の確保が課題となっていたことも記憶に新しいのではないでしょうか?
タンパク質は、温度だけでなく振動によっても影響を受ける性質があります。
振動がタンパク質の凝集に影響を及ぼす点に焦点をあてた論文
【輸送時の振動周波数と加速度に着目したタンパク質医薬品凝集の解析】
(2023年 大阪大学 内山研究室 城様 博士論文)
が発表されております。
この研究では、タンパク質の凝集現象について、どのような振動がタンパク質凝集を引き起こすのか
輸送時を想定した振動を与え、凝集が発生するメカニズムを明らかにしました。
振動による液面揺動(スロッシング)が起こる条件で凝集が発生するようです。
すごく簡単に書いておりますので、詳しくは後述の文献をご覧ください。
今後の再生医療にもバイオ医薬品は欠かせない存在であり
その研究の端緒に携わることができたのは、まさに僥倖でありこの上ない誉れであると感じます。
未知なることは面白い今回紹介した事例はいずれもお客様からの問合せから実施に至った事例であり
振動の活用方法として知見の無い内容でした。
その検証にライブで立ち会い、新たな知見に巡り会えたことは大変刺激的でした。
先日、振動試験機メーカーの方から【コラム見てますよ】と嬉しいお言葉をいただきました。
感謝と歓喜の感情とともに発信者としての責任を感じ、身の引き締まる思いです。
今回のコラムはここまで。
【関連文献】
・輸送時の振動周波数と加速度に着目したタンパク質医薬品凝集の解析
城 慎二 , 大阪大学 内山研究室 , 2023年 , 博士論文
・冷蔵時の微弱な振動がタンパク質の凝集に与える影響について
Kizuki S, Wang Z, Yamauchi S, Torisu T, Uchiyama S.
Impact of Weak Vibration Generated by a Refrigerator on Protein Aggregation.
AAPS J. 2025 Jan 27;27(1):34.
doi: 10.1208/s12248-025-01014-z. PMID: 39870844.
・落下の衝撃が凍結状態でもタンパク質の凝集を引き起こす可能性について
Torisu T, Maeda A, Ito S, Uchiyama S.
Protein aggregation in the frozen state induced by dropping stress.
Eur J Pharm Sci. 2025 Feb 1;205:106996.
doi: 10.1016/j.ejps.2024.106996. Epub 2024 Dec 24. PMID: 39722424.
あらゆる経済行動が自粛へと向かっていたころ
その裏で進められたコロナワクチンなどのいわゆるバイオ医薬品に関する研究事例を紹介します。
バイオ医薬品の主成分であるタンパク質は
期する効能に応じて望ましい状態を保持する必要があります。
コロナワクチンの接種が始まったころ、-18℃以下の徹底した温度管理が必要であるために
各自治体で保冷設備の確保が課題となっていたことも記憶に新しいのではないでしょうか?
タンパク質は、温度だけでなく振動によっても影響を受ける性質があります。
振動がタンパク質の凝集に影響を及ぼす点に焦点をあてた論文
【輸送時の振動周波数と加速度に着目したタンパク質医薬品凝集の解析】
(2023年 大阪大学 内山研究室 城様 博士論文)
が発表されております。
この研究では、タンパク質の凝集現象について、どのような振動がタンパク質凝集を引き起こすのか
輸送時を想定した振動を与え、凝集が発生するメカニズムを明らかにしました。
振動による液面揺動(スロッシング)が起こる条件で凝集が発生するようです。
すごく簡単に書いておりますので、詳しくは後述の文献をご覧ください。
今後の再生医療にもバイオ医薬品は欠かせない存在であり
その研究の端緒に携わることができたのは、まさに僥倖でありこの上ない誉れであると感じます。
今回紹介した事例はいずれもお客様からの問合せから実施に至った事例であり
振動の活用方法として知見の無い内容でした。
その検証にライブで立ち会い、新たな知見に巡り会えたことは大変刺激的でした。
先日、振動試験機メーカーの方から【コラム見てますよ】と嬉しいお言葉をいただきました。
感謝と歓喜の感情とともに発信者としての責任を感じ、身の引き締まる思いです。
今回のコラムはここまで。
振動の活用方法として知見の無い内容でした。
その検証にライブで立ち会い、新たな知見に巡り会えたことは大変刺激的でした。
先日、振動試験機メーカーの方から【コラム見てますよ】と嬉しいお言葉をいただきました。
感謝と歓喜の感情とともに発信者としての責任を感じ、身の引き締まる思いです。
今回のコラムはここまで。
【関連文献】
・輸送時の振動周波数と加速度に着目したタンパク質医薬品凝集の解析
城 慎二 , 大阪大学 内山研究室 , 2023年 , 博士論文
・冷蔵時の微弱な振動がタンパク質の凝集に与える影響について
Kizuki S, Wang Z, Yamauchi S, Torisu T, Uchiyama S.
Impact of Weak Vibration Generated by a Refrigerator on Protein Aggregation.
AAPS J. 2025 Jan 27;27(1):34.
doi: 10.1208/s12248-025-01014-z. PMID: 39870844.
・落下の衝撃が凍結状態でもタンパク質の凝集を引き起こす可能性について
Torisu T, Maeda A, Ito S, Uchiyama S.
Protein aggregation in the frozen state induced by dropping stress.
Eur J Pharm Sci. 2025 Feb 1;205:106996.
doi: 10.1016/j.ejps.2024.106996. Epub 2024 Dec 24. PMID: 39722424.
・輸送時の振動周波数と加速度に着目したタンパク質医薬品凝集の解析
城 慎二 , 大阪大学 内山研究室 , 2023年 , 博士論文
・冷蔵時の微弱な振動がタンパク質の凝集に与える影響について
Kizuki S, Wang Z, Yamauchi S, Torisu T, Uchiyama S.
Impact of Weak Vibration Generated by a Refrigerator on Protein Aggregation.
AAPS J. 2025 Jan 27;27(1):34.
doi: 10.1208/s12248-025-01014-z. PMID: 39870844.
・落下の衝撃が凍結状態でもタンパク質の凝集を引き起こす可能性について
Torisu T, Maeda A, Ito S, Uchiyama S.
Protein aggregation in the frozen state induced by dropping stress.
Eur J Pharm Sci. 2025 Feb 1;205:106996.
doi: 10.1016/j.ejps.2024.106996. Epub 2024 Dec 24. PMID: 39722424.